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Mysterious Skin ミステリアス・スキン

アメリカ映画 (2004)

チェイス・エリソン(Chase Ellison)が、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット演じる男娼ニールの少年時代(設定では8歳だが、実際には10歳くらい)を演じる衝撃的なゲイ映画。チェイスの出演する場面は、ニールが男娼になるきっかけを与えたリトルリーグのコーチによる性的虐待(実際にはニールの願望とコーチの欲望の一致)が中心なのだが、幸いにして、そうした行為を思わせるような映像は何一つない。チェイスの何とも言えない不思議な雰囲気が、魅力的であり、とても印象的でもある。チェイスは色々な映画やTVに顔を出してはいるが、この18分、プラスαの短い出演作が、彼の代表作として残ることであろう。

映画は、2人の少年ニールとブライアンの1981年夏のシーンが、それぞれ独立した視点で語られる。2人とも同じリトルリーグに所属しているのだが、ニールは、野球が巧く、コーチの大のお気に入りで、コーチの家でひと夏愛の行為にふけり、ブライアンはある事件が原因で、鼻血を出して卒倒するようになる。この、一見何の関係もない2人は、10年後、1991年のクリスマス・イヴになってようやく出会い、元コーチの家で、1981年の夏のある一夜の体験について、ニールがブライアンに真相を告げる。ブライアンが事ある毎に鼻血を出し、1981年の夏のある一夜の記憶がすっぽり抜けているのは、ブライアンへの性的虐待が原因だった。ニールにとっての快楽が、ブライアンにとっては最悪の衝撃だったという点がポイント。

チェイス・エリソンは、それほど可愛いわけでもないし、台詞もほとんどなく、演技らしい演技もほとんどしない。それでも、そのふわっとした雰囲気、コーチのそそるような独特の表情は、「なぜニールが男娼になったか」という疑問に答えるだけの説得力を持っている。あらすじを書くにあたり、ニールの少年時代に限定すべきか、1991年のクリスマス・イヴにニールがブライアンにする少年時代の回顧談を含めるべきか迷った。私にゲイ趣味はないので、きわどい用語の翻訳を嫌ったからだ。しかし、回顧談の部分がないと、少年時代のニールが結局何をしたのかよく分からないと思い、その部分もある程度紹介することにした。なお、少年時代は、ほとんど、大人になってからのニールの独白で占められている。それが区別し易いように、独白は緑字で示すことにした。


あらすじ

映画の冒頭、何の説明もなく流される少年時代のニールの顔の大写し(1枚目の写真)。顔にかかっているのはシリアルの一種だ。DVDのディスクの柄にも同じシリアルがプリントされている。実は、ニールが性的快感を初めて味わった瞬間を象徴的に表した映像なのだ。この、一見無意味なイントロが終わると、もう1人の少年ブライアンの、大人になってからの独白が流れる。ストーリーに関係するので紹介しよう。「その夏(1981年)、僕は8歳だった。5時間が人生から消えた。跡形もなく。最後に覚えているのは、リトルリーグのベンチに座っていたこと。雨が降り始めた。その後に起きたことは、何も覚えていない」。この空白の数時間の後、ブライアンはすぐに鼻血を出して卒倒するようになる。彼にとって、この5時間が、記憶を封印しないと気が狂うほどの体験だったことを示唆している。そして、次がニールの、大人になってからの独白。「その夏、俺は8歳だった。初体験をした」。こちらは、すごく前向きだ。「俺は、ママが、ご親友のアルフレッドと、ぶらんこでせっせとやっているのを見てた」「アルフレッドは、如何にもなマルボロマン(有名なタゴコ会社マルボロが宣伝に使ったカウボーイ風の男)で、豚のようにトロい奴」「今じゃ、『俺のタイプ』と言えるかも」「奴の口からは、うんざりするほどバカげたことしか出て来ないが、奴が発する、無力な動物がすすり泣いたり唸るような声を聞いていると、俺の目は奴に釘付けになった」(2枚目の写真)「俺はそれまで何年もオナニーをやってきたが、その夏になるまで、ペニスから精液が飛び出すことはなかった」。そして、独白は、映画の進行役まで務める。「コーチを紹介するのが 待ちきれない」「多分、最初から始めるべきだろう」「6月に戻ろう。ママは、俺をリトルリーグに入れた」「それはアルフレッドの案だった… 子守代なしで、自由にセックスするための」。
  
  

ニールは、母に連れられてリトルリーグまで連れて来られる。最初は、あまり乗り気でなかったニールだが、コーチが振り向いた瞬間、目が大きく見開かれる(1枚目の写真)。「俺は、一瞬雷に打たれた。彼は、水難救助員、カウボーイ、消防士に見えた」「その時まで、俺は、自分の気持ちが分かっていなかった。それは、『さあ開けて』と渡されたプレゼントのようだった」。この独白を聞けば、その後のニールとコーチとの関係は、児童虐待ではなく、ニールの願望が叶った結果だったことが分かる。ニールは、最初の試合から大活躍する(2枚目の写真)。「俺は、すぐにチームのスタープレーヤーになった。他の奴らは、無能なドジばかりだったから」「最初の試合の8回の裏、俺は満塁で三塁打を打った。観衆は大喜び」「俺には、どうでもよかった。大事なのは、コーチを喜ばせること」。
  
  

そして、次の段階へ。「最初の勝利の後、コーチはママに電話して、勝ったお祝いにチームを映画に連れて行くと話した」。コーチが家のドアをノックする。「やあ、名選手君、準備はいいか?」(1枚目の写真)。さっそく、コーチの車に乗り込む、「コーチ? 他のみんなは、どこ?」。「今日 一緒に行くのは、君だけだ」。「ホント?」。「そうさ」。「すごい」(2枚目の写真)。嬉しさと誇らしさの交じった顔だ。「観たのは『血のプロム』。準成人向きの恐怖映画… 流血と殺人。いらいらする女の首がちょん切られた時は、喝采した」(3枚目の写真)。
  
  
  

映画の後、ピザを買って、コーチの家に行った」「家の中は凄かった。大型テレビ、アタリ版『ドンキーコング』、『アステロイド』、『フロッガー』。全部、俺のお気に入りだった」。1枚目の写真は、2人でゲームを楽しんでいる場面。時間が遅くなったので、コーチは、「ママが心配してないかな?」と尋ねる。「今は、仕事中。その後は、たぶんアルフレッドとデート」。「じゃあ、いつも一人でいるんだな?」。「うん、いつも こんな風。自転車に乗ったりテレビ見たり。楽しいよ」。ゲームが一段落して、コーチは、「こっちへ来て。ソーダのビンも一緒に」と言って、録音装置の前にニールを呼ぶ。「いいかい… 最初は戸惑うかもしれんが、チームのみんなの声を録音しておきたい。特に、最高の選手の声を」「いいかい? 持って」とマイクを渡す。「普通の声で 話してごらん」。「何て言えばいいの?」。「好きなことを。名前から始めて」。「ニール」。「今度は、それをごくっと飲んで、げっぷして」。「しまった」。「もう一度」と、何度も「しまった」と言わせるコーチ。慣れてきて、笑顔になるニール(3枚目の写真)。
  
  
  

次にコーチはカメラを取り出し、いろんな顔をさせる。「舌を出して」(1枚目の写真)。「面白い顔して」(2枚目の写真)。山ほど写真を撮った後で、最後に「思い切り、口を開けて」と言い、その口に指を入れて「ニール、完璧だ」(3枚目の写真)。 コーチは、かなり変質的になってきた。
  
  
  

7月2日、ニールは、コーチの家を訪れる。「今夜は凄かったな。最高のプレーだった」。「ありがとう」(1枚目の写真)。コーチはまず、「見せるものがある」と言って、先日撮った写真を貼ったアルバムを見せる(2枚目の写真)。ニールは、そのうちの1枚が気に入らない。「これって、バカみたいだ」(3枚目の写真)。「違う。完璧だよ、君の表情。素晴らしい夢を見てるみたいだ」(4枚目の写真)。
  
  
  
  

「お腹すいた」と言い出したニールを、コーチはお菓子の詰まった棚に連れて行く。体を持ち上げて棚の中を見せ、「どれがいい?」と選ばせる。ニールは、10種類のミニ・シリアルを手に取り、「ママは、絶対買ってくれない。無駄遣いなんだって」と説明する(1枚目の写真)。「じゃあ食べよう」。「どれ食べる?」。「さあな。君は、どれを食べる?」。「ポップコーン」。「それじゃあ、ココア・クリスピーだ」。コーチはきれいに開けたが、ニールは失敗して中味が飛び散る。ニールは失敗して困った顔になったが(2枚目の写真)、コーチはニールの口に指をつける(3枚目の写真)。安心しろというサインなのか? それとも触りたかったのか? その後で、きれいに開けた自分のシリアルを頭からかぶる。さらに、他の箱もどんどん開け、ニールにも開けさせ、2人で掛け合う(4枚目の写真)。ニールは大喜び(5枚目の写真)。しかし、床一面に散乱しているシリアルを見て、こんなことして良かったのかと心配になる(6枚目の写真)
  
  
  
  
  
  

その時、コーチがニールをじっと見つめながら、「始めよう」と言う。そして、顔を近づけながら、「好きだよ、ニール。大好きだ」と言い、ニールを床の一面のシリアルの上にそっと寝せる。じっとコーチを見るニール(2枚目の写真)。コーチは、ニールのお腹に顔を付けると、「誰かを本当に好きな時は、それを示さないといけない」と語りかける。「君は天使だ」「キスするけど、何も悪いことはないんだ。悪いなんて、誰にも絶対言わせない」。微妙なニールの表情が示唆に富んでいる(3~5枚目の写真)。その後で独白が入る。「よくあることさ。そう、自分に言い聞かせた。終わった後、俺は散乱した床を見おろした。それは、壊れた万華鏡のようだった。唾を飲むと、口にコーチの舌の味が広がった」。
  
  
  
  
  

コーチから、「気に入ったかい?」と訊かれても、うつむいたままのニール(1枚目の写真)。しかし、「それでいいんだ。万事 順調だから」と言われ、顔を上げる(2枚目の写真)。陶然としたような、戸惑ったような、ぼうっとした表情だ。この時、何が起きたのかを象徴的に物語るのが、大きくなったニールが最初に客引きをし、ベッドに仰向けになり、老人にフェラチオされるシーン(3枚目の写真)で、ニールが射精する瞬間に、フラッシュ・バックのように入るニールの恍惚とした顔(4・5枚目の写真)。ニールの顔の前にはシリアルが降っているので、この日が「初体験」だったことが分かる。
  
  
  
  
  

次のシーンは、1983年10月。子供たち全員がハロウィーンの格好をしている(1枚目の写真)。ニールは、同じ変装をした女の子と一緒だ。「俺は、10歳の時、ウェンディ・ピーターソンと出会った。彼女は11歳で、俺より1つ上級だった」。ニールは、大きな図体の知恵遅れの男の子を見つけ、ウェンディに「あいつを誘拐しよう」と持ちかける。そして、「取ってくるものがあるから、彼と待っててよ」と言って家から花火を取って来ると、「横になれよ、知恵遅れ」と草原に寝かせる。「な_何するんだ?」。「黙れ。黙ってないと殺す」。そして、「口を開けろ」と言って花火を2本口に突っ込み、「いいか、しっかりくわえてろ。言われた通りにしないと、殺してやるからな」と脅して火を点ける。口から打ち上がる花火(2枚目の写真)。男の子の口は、怪我こそしていないがひどい状態になっている(3枚目の写真)。「ニール、告げ口されるわ!」。「心配ない。どうするか知ってる。こいつを、僕たちの側にしちゃえばいい」。そう言うと、ニールはズボンを脱がし、「少しの間じっとしてろ。お前は僕の緑の相棒だ。今から、いいことしてやる。僕が小さかった頃、ある人がいつも僕にしてくれた。お前も気に入るぞ」。そして、手でペニスを触りながら、「これだ、これこれ。どうだ」と言う(4枚目の写真)。そして独白。「ウェンディは、その夜以後、俺を別の目で見るようになった。これまで誰にも見せたことのない秘密を分け合ったことで、2人は、永遠に結び付けられた」。最後は、ニール頭が下に消えるので、フェラチオを始めたのだろう。ウェンディはあんぐり口を開けて見ている。
  
  
  
  

この後、大きくなってからの男娼としてニールの姿が描かれる。最初のシーンは1987年11月なので15歳だが、演じているジョゼフ・ゴードン=レヴィットは20歳を超えているので、どうしても大人に見えてしまう。映画の最後、1991年のクリスマス・イヴに、ニールとブライアンが出会い、コーチの家を再訪する。コーチは、ニールが夏を一緒に過ごしてからふっつりと姿を消し、家は空き家のままだ。2人がここに来たのは、ブライアンが自分の空白の過去を知りたかったから。ブライアン:「全部 話してくれないか」。ニール:「俺は、お気に入りだった。みんなの中から、俺を選んだ。変に聞こえるだろうが、それが始まった時、俺は誇りに感じた」「俺の初体験の場は、キッチンだった。それは、夏中 続いた。2人だけで」。話は、ブライアン個人に絞られていく。映画の冒頭の独白と重なる部分だ。ブライアン:「試合が始まったトコだった。僕は、いつものようにベンチだった。雨が降り始めた。最初はポツポツ、それからどしゃ降り。試合は中止」。「でも、誰も迎えに来なかった」とニール。「みんな、両親と帰って行った。僕は 一人とり残された。ダッグアウトにいた君が、僕に言った…」。ここで、子供時代の映像に変わり、ニールが言う。「一緒に行こう」(1枚目の写真)。大人のニール:「コーチのステーション・ワゴンに乗った。覚えてるか? ここに連れて来られた」。コーチ:「遠慮するなブライアン。一緒に楽しもう」。ニール:「彼は、君を寝室には入れなかった。そこは、俺たちだけの場所だったから。だから、あれは、この部屋で起きた」「他の子がいる時は、いつも同じだった。俺は、君を取り込む役だった」。ここで再び子供時代のニールが一瞬映し出される(2枚目の写真)。大人のニール:「コーチは俺の服を脱がしたが、それは俺が頼んだからで、面白いゲームをするためだった」。子供のニール:「いいか、これがルールだ」(3枚目の写真)「最初に、僕がキスする。そしたら、僕にキスする。次は、彼の番」。そして、ニールは、「いいか?」と唇を寄せていく(4・5枚目の写真)。大人のニール:「で、俺は、君の口に舌を入れた。濡れて光っていた」「で、次はコーチの番。彼の大きな唇が、君の顔を舐めるのを見てた」「俺たちは、君の服を脱がせ… すると君は子犬のように泣き出した。まずコーチと俺が始めた。彼は口を開けると、俺のペニスとタマをくわえた。俺が終わってから、俺は、君のをやろうとしたけど、できなかった。口が小さすぎたから」「それから… 彼が、君の上に。長いことやってたな。君の目はほとんど閉じてたが、時々開いてた、そして… ぼんやりした、夢見るような目つきになった。それで、イッたことが分かったから、俺は囁いた」。子供のニール:「楽しいだろ?」(6枚目の写真)。「楽しいって、言ってやれよ」。この体験が、ブライアンの人生を狂わせたのだ。最後の一連のシーンに出てくるチェイス・エリソンは、小悪魔といった感じで怖い。
  
  
  
  
  
  

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